パンでハッピーを! ベーカリーカフェ「HIkoOKI」店主児島佳史さん

ひと

兵庫県丹波篠山市の中南部に位置する日置(ひおき)地区。その一角で、丹波篠山市地域おこし協力隊の児島佳史(こじま・けいし)さんがベーカリーカフェ「HIkoOKI」(ヒコオキ)を営む。店内は香ばしい匂いが漂い、カウンターには児嶋さんが得意とするフランスパンの一種「リュスティック」を中心に、丁寧に焼き上げられたパンが15種類ほど並ぶ。

店名「HIkoOKI」の由来、大切にしたいこと

店名の“HIkoOKI”から大文字だけをとると“HIOKI”。店が立地する日置(ひおき)地区に由来する。

HIkoOKIの店舗は市の地域活性のための拠点施設「日置ラボ」にあり、地域住民の交流の場として、また、児島さんが友人らと共に、子どもたちに勉強を教える「寺子屋カフェ」として地域の人が訪れる。

「昨年の4月に、パッと移住して来た私を、地域の皆さんが温かく迎えてくれて、自分の居場所をつくってくれた。だから、恩返しというか、丹波篠山の人に喜んでもらえることを大切にしたい。地域の方に愛される店にできたら」と初心を振り返る。

「地域に根ざす店」を目指す児島さんは、丹波篠山の特産物を使ったメニュー作りにも熱心。看板商品でもある“山の芋食パン”は、特産山の芋を練りこみ、ふわふわ、もちもち食感を楽しめる仕上がりだ。

児島さんは「山の芋食パンで使用している山の芋は、寺子屋の教え子のご家族からいただいているものです。パンを食べたお客様から美味しいという言葉をいただくと、原料である農作物の生産者にも喜んでいただけて、それが農作物の作り甲斐にも繋がります。そのために地域のものを使っていきたいと考えています」と話す。

憧れだったパン屋

現在28歳、兵庫県三田市育ちの児島さん。実はスペインで生まれ、3歳頃まで暮らしていたそう。そんなバックグラウンドがあってか、無類のパン好きで中学生の頃から「パン屋」になることに憧れていた。

大学時代は弁護士などパン屋以外の職業を目指す時期もあったが、本当に好きなものじゃないと続かないと考え、全国展開する老舗ベーカリーに就職。製造部門やマーケティング部門に携わった。

同僚は、専門学校でパン作りを学んできた人も多い中、素人からのスタート。パンにどっぷり向き合う日々が始まった。老舗ベーカリーに入社し約半年、社内コンペで提案した、「アルザス地方のマカロン」をヒントにアレンしたパンが商品化につながったそう。

「幼い頃から研究た実験が好きでした。いろいろな配合を変えて様々な入浴剤作りを試してみたり。結構一つのもに熱中してしまいますね」

本気で店を構えることを考えた時

老舗ベーカリーで働くうちに、本気で自分の店を構えようと考えるようになった児島さん。

「前職では営業本部勤務の時に、多くの店長に出会い、お話を聞いた。大きな組織の 店長の仕事は、店舗の売り上げや運営が中心になってしまうので、そんな姿が辛そうに映ってしまうことがあった。

自分はお客様と近い距離で接したいし、接客をする余裕のある働き方、生き方にしたいと思う。やっぱり自分がハッピーじゃないと、相手をハッピーにはできないと思うので」

そんな時、丹波篠山で活動していた友人の姿を見た。

誘われ訪れた丹波篠山

丹波篠山市地域おこし協力隊員であった友人の誘いで、社会人になってからも、合間をぬって篠山を訪れていた。友人の活動を手伝う中で、地域の人に囲まれながら地域課題と向き合う友人の姿に影響を受けた。「地域の人と“関わりながら”店をしたい」と、一念発起して児島さんも丹波篠山市地域おこし協力隊へ申し込んだ。

「丹波篠山市には、子どもの頃から家族とよく訪れていて、自然豊かで、人が温かいと感じていました。今は、いろいろな事業をする人に出会って、個性的な人が多いと感じています。丹波篠山市の東部と西部で協力して面白いことができたら」と語る。

丹波篠山を味わえるランチ

店内には20席 イートインスペースが設けられ、児島さんのパンはもちろん、野菜ソムリエの林港(はやし・みなと)さんが振る舞うこだわりのランチメニューも味わえる(木曜日~日曜日)。

児島さんと林さんは、JR篠山口駅ナカにあるビジネススクー ル「農村イノベーションラボ」イノベーターズスクールで出会い、一緒にビジネスを立ち上げたそう。息のあった二人の掛け合いが楽しく、ランチを食べながらお二人とのほんわかする会話にも癒される。

ランチメニューで使用される野菜は、林さんが仕入れ、オレンジ色の白菜を使った ロールキャベツなど丹波篠山産の新鮮で珍しいものも味わえる。日替わりランチ、スープランチともに、リュスティックが至福の時間に彩を添える。「生地をこねる時間を1秒単位で調整するのですが、そういった小さな変化でも常連のお客様は気付いてくださるので、油断できません」と笑う。しかし、このようなダイレクトなお客様の反応に、とても働きがいを感じているという。お客さんに喜んでいただけることを大切にしている児島さんの今後の活躍に期待したい。

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