お苗菊とは
お苗菊(おなえぎく)とは、江戸時代から伝わる丹波篠山特有の中菊のことです。
旧篠山藩の青山第五代藩主である青山忠良公が、大阪城に在籍中に、将軍から拝領(目上の人から物をいただくこと)し、家臣に栽培させたと伝えられています。
ちなみに、中菊とは菊の品種で、中輪の花を咲かせるものを中菊と呼び、お苗菊の他には、江戸菊、丁字菊、肥後菊、伊勢菊、嵯峨菊などがあります。
江戸時代には園芸植物がとても発展し、当時「お苗菊」の品種もたくさんあったようですが、戦時中に多くの品種が絶えてしまい、現在は21種類の花が残っています。丹波篠山市菊花同好会のみなさんが菊づくり講習会を行ったり、市内の小学生が学校活動で栽培するなど、約250年の歴史を経た今でも丹波篠山付近で、愛育され続けています。
愛好家の方は、お苗菊のことを、親しみをこめて「おなえ」と呼びます。この21種類の「おなえ」は、それぞれ色や形が全く異なっていて、さまざまな色や形を楽しむことができます。丹波篠山以外では見ることのできない特別なオンリーワンなのです。
お苗菊の特徴
お苗菊の特徴は、なんといっても花びらにあります。
まず一度開いた花びらが、踊っているように巻き上げる(抱える)という特徴があり、とても優美で深い味わいがあります。
その「踊り」は、1ヶ月間ほど楽しむことができ、初めの「咲き開き」から「抱え始め」を経て、「抱え」という三段階に区別されます。
「抱え」の時期になると、花弁がくるくると巻いて、あちこちに向き、まるで、パーマをあてたヘアスタイルのよう。その様を「狂い」と呼ぶこともあるようです。「狂い」というと、間違っているようなネガティブな印象も受けますが、実際の花びらはとても可憐で美しいものです。
なお、江戸菊にも同様の特徴があり、「狂い」や「芸菊」と呼ばれ親しまれているようです。形が変わっていくことを、舞踊などの芸事などに例えたのでしょうか。「芸をする菊」とは、江戸っぽくて粋ですね。
お苗菊は、丹波篠山の花ですから、同じく丹波篠山に伝わる民謡「丹波篠山デカンショ節」に合わせてデカンショ踊りを踊っているのかもしれませんね。
お苗菊の種類
| 名前 | ふりがな |
1 | 金閣院 | きんかくいん |
2 | 王地の桜 | おうちのさくら |
3 | あけぼの | あけぼの |
4 | 雲井の庭 | くもいのにわ |
5 | 日の出源氏 | ひのでげんじ |
6 | 敷島 | しきしま |
7 | 春の宵 | はるのよい |
8 | 桃丁子 | ももちょうじ |
9 | 古城の牡丹 | こじょうのぼたん |
10 | 小倉山 | おぐらやま |
11 | 天上の舞 | てんじょうのまい |
12 | 沖の漁火 | おきのいさりび |
13 | 緋の袴 | ひのはかま |
14 | 太平の里 | たいへいのさと |
15 | 大鳥毛 | おおとりげ |
16 | 秋の手柄 | あきのてがら |
17 | 苅田の雪 | かりたのゆき |
18 | 岩越波 | いわこしなみ |
19 | 天の岩戸 | ああのいわと |
20 | 陶家の世界 | とうやのせかい |
21 | 天地開闢 | てんちかいびゃく |
丹波篠山デカンショ節に歌われるお苗菊
その「丹波篠山デカンショ節」には300以上も歌詞があると言われており、お苗菊に関する歌詞があります。
「♪秋の篠山 お城の下で 殿も愛でたよ お苗菊」
江戸時代のお殿様や人々が楽しんだ菊の花を、今も楽しめるということは素敵なことだと思います。
お苗菊を見よう
もし、お苗菊を見たいと思った方は、毎年11月上旬に開催される、丹波篠山市菊花展がおすすめです。
篠山城跡から歩いてすぐ、大手前南駐車場の特設会場で開催される菊花展では、愛好家が丹念に育てた花々が一堂に会しますので、色とりどりの花を楽しむことができます。
「踊り」に例えるなら、丹波篠山市菊花展は、年に一度のダンス発表会。アイドルグループに例えるなら「ONE21(オナエ21)の総選挙」といったところでしょうか。お苗菊の21のメンバーの中から、ぜひお気に入りの花を見つけてみてください。その際には、花びらの美しい踊りに注目して楽しんでみてくださいね。
なお、ここ最近、地方創生のニュースやテレビでも盛んに取り上げられる古民家ホテル「ニッポニア」には「ONAE棟」という建物があります。その名前は、このお苗菊をモチーフに名付けられたようです。お苗菊が楽しめる11月は、観光にもとても良い時期ですので、お苗菊をみたあとには、ONAE棟でランチやディナーを楽しんでみても良いかもしれませんね。
ぜひ、心が踊るひとときを楽しんでみてください!
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