平成23年から丹波篠山で畜産農家として事業を開始した清水健司さん。

そもそも畜産業とは?

 畜産農家と一口で言っても種類や仕事の内容はさまざま。 
 まず、肉牛を育てる和牛生産と乳牛を育てる酪農生産に分類することができます。また和牛生産はさらに、種付けから出産、子牛までの育成を担う繁殖農家と子牛を引き継ぎ成牛まで育てる肥育農家に分かれます。清水さんはその繁殖農家として、日々おいしいお肉を届けるため、牛の世話をしています。

丹波篠山で畜産農家を志した理由とは?

「人とは違うことがしたかった」
そう語る、清水さん。中学校までは丹波篠山で過ごしましたが、高校進学を前に将来の自分の姿を考えます。人とは違う仕事がしたいという思いの中で頭に浮かんだのはおじいさんの営む畜産業でした。そして、高校からは県内の畜産を学べる高校へ進学、その後北海道での実践を経てUターン、おじいさんの跡を継ぎました。

繁殖農家として

繁殖農家の仕事は「種付け」から「出産」、そして産後9か月まで子牛を育てます。そのあとはセリにかけて肥育農家の手に渡ります。近年は様々な要因から子牛の頭数も少なく価格が高騰しているといいます。清水さんが年間で出荷するのは30頭ほど、牛舎には親牛が42頭おり、約1年周期で出産を繰り返していきます。今は清水さんを主体として両親と共に仕事を進められているそうで、「いまでは畜産のことは自分が一番よく知っている。」と自信満々に話します。就農当初は、和牛繁殖の経験があるおじいさんからアドバイスを受けながらの経営でしたが、その後、努力の甲斐もあり、市内の品評会で優秀な成績を収めるようになりました。最近は市場でも高値が付くなど肥育農家から高い評価を得ています。

せりに出す前の子牛たち
せりに出す前の子牛たち

良い子牛の見分け方

「よい子牛は毛並みが良く、胴が長く足が短い俵型なんです。」そういわれて私たちも目を凝らして出荷前の子牛を見比べましたが、素人には見分けることができませんでした。「白血病など重い病気にかかることもありますし、出荷する日まで気が抜けません。こまめに見回ってやること、病気を早く見つけてあげて治療することが大切なんです」清水さんは早朝から夜中まで何回も子牛の様子を見て回ります。

ブランド牛として旅立つ清水さんの子牛たち

全国にはブランド牛がたくさんあり、兵庫県内だけでも神戸ビーフをはじめ、但馬牛、丹波篠山牛などたくさんのブランド牛がひしめき合っています。実はこのブランド、牛の種類ではなく、飼育期間の長いところの産地から名前をとられるのです。清水さんの育てた子牛は、出荷先のブランドの牛肉として売り出されます。つまり清水さんの育てた子牛は但馬牛にも神戸ビーフにもなるということです。

「但馬牛の血統は他品種に比べ、血統が純粋なんですよ。」
これは清水さんが地元丹波篠山で畜産を志した理由の一つでもあります。驚いたことに清水さんが飼っている親牛はすべてメスばかり、兵庫県では血統維持の為、雄牛を県で一元的に管理しています。「こういったシステムを導入している自治体は少ないんですよ」品質の高いおいしい肉を継続的に消費者に届けるためには血統も大事だそうです。

せりに出す前の子牛たち
子牛の首に巻いてあるのはマフラーで、体調管理には細心の注意を払っています

「食べてやることが一番の供養」

手塩にかけて育てた子牛が売れていくことはさみしくないのかと尋ねると「さみしいというより頑張っていい牛に育てよという思いが強いですね。」と清水さん。なじみの肥育農家さんから連絡を受け、清水さんが育てた牛をと殺場まで見に行くこともあります。これは育ってくれた喜びと消費者においしい肉を届けられる喜びを感じる瞬間でもあります。

これかの展望を笑顔で話す清水健司さん
これからの展望を笑顔で話す清水健司さん

夢は安定した雇用と「耕畜連携」

今後は頭数を増やして、安定した雇用の場を提供できるような経営をしていきたいとのこと。「増頭するには餌の確保が重要となるため、堆肥を農家へ、稲わらを畜産農家へ提供する、『耕畜連携』を確立していきたい。そのために、堆肥舎の整備や堆肥の散布方法について考えていきたい。」とこれからの展望を語ってくれました。

そんな清水さんをヒトコトで言うと「丹波篠山で最も牛を愛する人」です。